いちごが小学1年生の年、夫がいちごを連れて家を出て行ってしまいました。
当初は義理の実家に泊まりにいくと言う話だったのですが、気が変わり帰らないことにした、いちごの小学校は実家近くの学校に転校する、と勝手に言い出した夫。
あまりの身勝手さに私はパニック状態。
そんな中、覚えのない書留が届いたのです。

連れ去り別居
なかなか馴染みのない言葉かもしれません。
当時私は、「夫がでていった」「子連れ」などで検索してこの言葉を知りました。
大雑把に説明すると,離婚を見据え別居する際、子どもがいてなおかつ親権で揉めることが予想される場合、別居時に子どもと一緒にいる方の親が親権者になれる確率が高くなることから,別居時に親権目当てに子どもを連れて別居することを、連れ去り別居といいます。
この場合,別居された側の親には虐待や暴力などの非がないことが多いです。
一方の親に虐待や暴力の類があるのであれば,子どもを連れた別居は避難にほかならず,連れ去り別居とはまた別のものです。
昔のようにお嫁さんが嫁いで夫家族と同居が当たり前だった時代は,『子どもは嫁いだ家のもの』という意識が強かったため,離婚時にはお母さんが子どもを置いて家を出ていく,ということがよくありました。
ところが現在は核家族化しており,離婚を決意したお母さんが子どもを連れて出ていく,もしくはお父さんが子どもを連れて出ていく,というようなことが横行するようになりました。
迎えに行ったら誘拐!?
私の場合,夫は自宅から約500キロ離れた義理実家へ別居してしまいました。
子どもを連れ去られた方の親は,大変に焦ります。
対面したことのない出来事に頭はパニックになり,早くなんとかしなければ,という思いから焦って子どもを取り返しにかかることも珍しくありません。
かくいう私も,迎えに行って娘を連れてくることも考えました。
しかし落ち着いて考えてみて下さい,勝手に子どもを連れて別居するなどという強硬手段に出ている相手が,話し合いに応じ素直に子どもを返してくれるとは到底思えません。
相手とはかなり揉めることが予想されますが,そもそも相手が勝手に連れて行ったのだから,こちらも強引に奪い返しに行って然るべきでしょうか。
実は一方が既に子を連れて別居してしまった場合,強引に連れ戻してしまうと,場合によっては未成年者略取に該当することがあります。
ではどうしたらいいのでしょう?
この場合,『子の引き渡し』に関する法的手続きを経て子どもを取り返さなければなりません。
最初に連れて行くのはアリで、なぜ連れ戻すのはダメなの!?と思いますよね。
勝手に連れ戻す行為は、法を無視し自分で問題を解決しようとする実力行使に当たります。
日本は法治国家なので,法律に違反した場合にはなんらかの刑事罰や民事罰などの処罰が課せられることになります。
例えば暴力団が行うような暴力行為,恐喝,盗難などは社会的に非難され,処罰を受ける対象行為であり,これら法に従わない実力行使は法治国家では認められていません。
子どもの連れ戻しも実力行使としてみなされるため,正規の手続きを経て取り戻す必要があるのです。
以下の3点セットが主に使われる調停となります。
子どもが連れ去られた時にとるべき手続きとは
主に以下の3点セットが使われますが、大切なのは調停ではなく審判にすることです。
調停とは話し合いを設けるための場所なので,相手方がダラダラと引き伸ばし,その間に監護実績を積まれてしまうと厄介です。
そのため話し合うだけの調停ではなく審判(裁判所に直接判断してもらう)を取って早期解決を目指します。
ざっくりと説明すると,このような感じです。
①子の引き渡しの審判
子どもを自分に引き渡してください,という審判です。
②子の監護者指定の審判
子どもを監護(世話をする)のを自分に指定してください,という審判です。監護者と認定されても引き渡しをしてもらえないと意味がないので,①と同時に申し立てをする必要があります。
③審判前の保全処分
子どもの心身に危険がある等,緊急事態で引き渡しを急がなければならない時に申し立てます。
通常は3点をセットで申し立てることが多いのですが,③は余程の緊急事態でない限り,通ることはありません。
裁判について,詳しいことは別の記事に書こうと思いますので,よかったらそちらもご覧ください。
届いた郵便物の正体
届いた書留の差出人は,夫の雇った弁護士さんからでした。
そこには夫と受任契約を結んだこと,そして離婚調停を申し込むので応じるように,といった内容が書かれていました。
気付けばいつもの場所に通帳も印鑑も見当たらず,夫の部屋は綺麗に整理整頓され,大事なものは皆持って行ったようでした。
そういえば,出かける前やたら夜中にゴソゴソ音がしていたし,2〜3泊するだけにしては随分大荷物だなと思ったものです。
夫はもう家に帰るつもりはなく,娘を連れて行くことも全て計算済みだったのです。
娘を迎えに行くことは何度も考えましたが,相手が既に弁護士さんを雇っていたので,結果的には行かなくて正解だったと思います。
そしてこの事により私も法律事務所に初めて足を運ぶことになるのでした。
落ち着いて対処すること
連れ去りはある日突然やってきます。
多くは,長期休みや祝日などの連休を利用して行われます。
連れ去られた方の親は,不安で眠れず常に動悸がするようになります。
どこへ行けばいいのか,何をしたらいいのか全くわからない中,早く対処しなければならないという焦りだけが生まれます。
このような時だからこそ,落ち着いて,信頼できる人に事情を話してみてください。
1人でできる情報収集には限度があります,信頼できる人に手伝ってもらうことをぜひお勧めします。